今週の儲かる繁盛店の視点 第502話:「365日人件費を有効活用出来る企業と出来ない企業の違い」
「先生、来期は教育や評価制度の見直しをしたいんですがどう考えればいいのでしょう?」
とある企業の社長さんからのご相談です。
――――具体的にお話をお聞かせいただけますでしょうか?
お話をお伺いすると、これまで、会社としてやるべきことを、トップダウンでどんどん進めてこられたそうです。たしかに業績は伸ばすことができたのですが、何か指示をしてやらせようとしても意見がでず、指示を待つようになってしまったとのこと。
――――なるほど、
これでは、まずいということで、社員教育を見直そうと思っても、人事部からでてくる中堅研修だけでは何も変えることはできません。
また、評価制度にしても、評価する側の話はあっても、評価をされる側が売上などの業績評価を上げるのに、具体的にどうすればいいのかというものもありません。
実際、店舗業績を上げていくために、どうすればいいのか?そういった教育の場をどうやって作ればいいのか?といった想いから相談にお見えになったそうです。
―――――何があればその目標に近づいていくことが出来ますか?
情報や知識は聞いただけでは身になりませんから、出来れば、トライ&エラーでもいいので実践しながらできる方法みたいなものがあればいいのですが…という 社長の強い決意のもと、業務改革プロジェクトはスタートしました。
数カ月後・・・
「先生、こうやって調査していくと いままで思っていたことと別のことが見えてくるようになりました」社長からの一言です。
店の作業調査をやり始めたことで、売上を上げるのに何が必要で何をやってはならないのかが、はっきりと見えてくるようになってきた。とのこと。
作業追跡調査をやると、見られている意識が働き、調査される側の人は、作業はおのずと速くなり、普段やってないことまでやろうとした動きになります。
品出し作業や、清掃であったり、お客様への笑顔の挨拶やちょっとした売場手直し等、次から次へと休む間もなくこなしていくわけです。
このペースで毎日やってくれれば、良い売場コンディションが維持でき、売上も上がるお手本のような動きです。
売上が高く、忙しい日は動かざるを得ないということから、誰もがある種こういった動きになります。一方で売上の低い日はどうかというと、時間に余裕があるためゆったりマイペースでやろうとします。
人間は、忙しい時は速くやり、暇な時はゆっくりやろうとするのが人の性だからですが…
ここで問題となってくるのは、売れる日と売れない日の差が1.3~1.5倍もあるのに、人時数つまり総労働時間はどの日もほぼ同じに張り付いているということです。
実際、週に1~2回ある売上が高い日はそれでもいいかもしれませんが、反対には大半を占める売上の低い日は人件費超過で赤字の可能性があるということです。
毎週の営業会議では、売上、粗利、商品価格については議論が行われるものの、こうした人件費ついての話題はでてくることはありません。そもそも、日次、週次の人件費は出すことが出来ませんからどこに問題があるかわからないからです。
かつて、人口が増えてた頃は、売上も安定していましたし、人件費も安く抑えることができたことから日次週次でそれを点検する必要などなかったわけです。しかし、状況は一変し、今は、人口減で売上は減少し、賃上げや時給の上昇していることから、一日たりとも見過ごすわけにはいかない状況に変わってきているということです。
―――――もし、この人件費問題を放置した先の3年後はどうなりますか?
人口減で客数は下がり、人件費は毎年上がりますから赤字転落の恐れがあります
―――――他にもどういったことがありますか?
従業員の賃上げができないばかりか、リストラをしなくてはならなくなるかもしれません。
そうなると、それを察した、ベテラン社員から辞めていくという連鎖がおこり、売上ダウンは必至となり、企業として持たなくなるかもしれません。
――――では、逆に、満足できるようになるというのは、どういうことですか?
売上に対して、投じる人件費がコントロールできることだと思います。
毎年の賃上げ予測から、人時数を逆算して目標設定することが出来れば、目指すゴールがわかり、事前対策をどうとればいいか可能性を探す時間をつくることができるからです。
前出の社長さんがおっしゃられたように、こういったプロセスは机上や他社事例を聞いただけではできません。そして、繰り返しやることで実務力を身に着けていくことが 人材育成と企業成長への最短ルートといえます。
従来型の人の教育や評価制度がダメだといってるわけではありません。教育したことの成果を最短で手にすることで、投資回収率も従業員貢献意欲の向上が結果となって表われてくるからです。
日々の人件費がどのように使われていて、どこに問題があるのかを特定していくことが重要と考えるのはこうした理由からです。
業務改革プロジェクトの目的は企業の収益構造を変えることですが、同時の実践の場として、教育の意味をもたせることが重要になってくるということです。
さあ、貴社ではまだ、他社事例や人事制度をあてはめ無理に廻すことに労力をかけますか?それとも、現状の問題を特定し、診立て改革の手術を施すことで企業も人も大きく成長させますか?