今週の儲かる繁盛店の視点 第507話:「なぜ、売上を基準にした生産性改善は迷走を繰り返すのか?」
先生 今期の賃上げは見込んでいますが、来期以降はどうすればいいのか?見えていないんです… Zoom個別相談で、とあるスーパーマーケット企業の経営者さんからのご相談です。
お話をお伺いすると、今は、売上は維持できているのですが、値上げが一巡すると、その恩恵は無くなってしまうので、人時売上(ニンジウリアゲ)に取り組むべきかどうか悩んでおられるとのこと。
――――具体的にお話を聴かせていただけますか?
ある大手スーパーマーケットチェーン企業が、レジの生産性をあげようとしてフルセルフレジを入れ販促クーポンを止めたら、客数が1割も落ちてしまった。という情報を知り、
もし、ウチで売上が1割も落ちたらやっていけなくなってしまうことから、どうすればいいか?社内で話し合っています。
――――今、人時売上改善策として考えているおられるのは、フルセルフレジ導入だけですか?
売場でも、販促クーポンやチラシに手間がかかることはわかっていてこれも削減の方向で検討はしています。しかし、それを止めるとなると客数が減ってしまうので、そのリカバー策が分からないのです。
うちは、店舗数も少なく人時というコトについても、これまでやったことがありません。そんな状況でも成果が出せるかどうか本当に不安なのです。
――――なるほど、おっしゃる通りだと思います。ところで、来期の目標はどのくらいでしょうか?また、それに向けどんなことを取り組んでおられますか?
売上は前年並みですが、賃上げで人件費が増えているため、まずは、残業(時間外労働)が減るようにしていこうと思っています。
そのうえで会社としてムダな作業はどういったものがあるのか?について調べていこうと考えています。
――――ムダな作業を探すには何があれば見つけることができますか?
どういった観点でムダを探し出していけばいいのか?実現可能な目標を作り実行したとしてどのくらいの数値が見込めるのか?それにはどのくらいの人員体制と時間が必要なのか?といったことを知りたいのです。
――――特に、解決されたいことはなんですか?
今からすぐ始めた場合、実現可能な利益は、どのくらいまで見込めるか?といったことです。
――――ー よろしければ、気になっているお店の直近の売上粗利率と販管費率はどのくらいか教えていただけますか?
平均的な店となるA店の場合、年商は14億で、粗利は21%、販管費は20.5%、利益率が0.5%ぐらいです。
――――― このお店の利益率を、とりあえず一年後に1%にもっていくためには何が必要か?と考えた場合、プラス0.5%(14億円×0.005%=7百万)の利益改善が必要になってきます。
これを、売上・粗利でとろうすると年間売上33百万(7百万×0.21=33百万)が必要になり、ざっと一日あたり10万円のプラスオン売上が必要となる計算です。
昨年のように値上げが繰り返された時でしたら、ある意味期待できたかも…といった水準です。
しかし、値上げが一巡してしまった今、前年比すらもクリアするのは難しくなるというのが現実といえるでしょう。
そこで、大事になのが不確実な売上ではなく、着実に見込むことが出来る販管費で7百万円を稼ぎだす。という考えにシフトしていくということです。
これによって、もし、売上高が1~2%下振れしたとしても増益の成果を手にすることが出来るからです。
極端な話を言えば、売上高が10%下がっても、販管費比率を1.5%(約20百万)程度下げることが出来れば、増益も十分可能ということです。
冒頭の企業で、売上が10%落ちる恐怖から何もできないという心理的な壁も、予め販管費率で1.5%引き下げる策を作って実行ができれば、比較的簡単に増益実現も可能になるということです。
売上が落ちることが問題ということだけでなく、売上が落ちる前提でも増益できる方法を考え行動することが出来るかどうかが、勝負の分かれ目になるというコトです。
詳細はセミナーでお伝えしていますが、まずは、今の会社が置かれている状況をお聞きし、無理なく実現できる目標を設定していきます。そのうえで数個の施策を組み合わせ、無理のない計画を作り成果が出せれば、不安を払拭することができるからです。
さあ、貴社では、まだ、売上ダウンの恐怖に怯え尻込みをし続けますか?それとも、自社の実態をくまなく調べ、石橋を叩かなくても渡れる状態を作りだしますか?