今週の儲かる繁盛店の視点 第509話:「あなたの会社では、作業指示書をどうやって作ってますか?」
先生 作業指示書と作業マニュアルがありますがどちらから先にやればいいのでしょうか?
少し前に、個別相談にお見えになったスーパーマーケットの社長さんからのご相談です。
聞くとことによると、今、マニュアルづくりから作り始めていて、作業指示書もやろうとしている途中で、なかなかうまく進まない。とのこと。
確かにネットで「作業指示書」を検索すると、マニュアル化、メール仕分け、作業フロー、といったものもが次々出てくるので、何処から始めればいいのかとても分かりにくいといえます。
百聞は一見に如かず、社長のご依頼を受け、お店の状況を、拝見させていただくことになりました。
当日は、作業指示書をご担当されている業務改善部の責任者の方ご案内していただいたわけですが、「なかなか進まなくて大変なんです…」とかなりお疲れのご様子。
店に入り、店長にお話しをお聞きすると、「作業指示書は作っても何も変わらないですし…」「そこに組み入れられてる標準時間でやろうとしても、時間内に終わらない予算になっている」といった声から「効果が少ない」「正しい数値が出ない」という問題が浮き彫りになりました。
一方で、業務改善部は、まず、マニュアル化しなさいというとこから入ったため、作ったマニュアルは200以上あります。
それを、作業指示書とどういう形でいかせばいいかわらないことで迷走していて、効果を期待する店と全くかみ合っていないというコトも見えてきました。
小売業の多くは作業マニュアルなしにやってきたという背景があるため、どうしても、今、やってることを文章化したりデータ化することから…と考えたくなるのは、とてもよくわかります。
しかし、何かをまとめたり分析することが目的になると、コストばかりがかかるという、おかしな方向にむかってしまいます。
そういう私自身もマニュアルには苦い思い出があります。 前職時代、自分の率いる業務改革チームでも何度か作業マニュアルを作ったことがあります。
たしか、グロッサリー部門一つで厚さ10センチくらいのファイルで、リフォームカタログなようなものだったと記憶しています。
しかし、それは、一度も日の目を見ることなくお蔵入りとなりました。
理由は簡単です、・・そこに書かれていたことで困っていた店舗はひとつもなかったからです。
社内研修時に配られたテキストが現場で一度も使われることがないように、現場で教科書のようなものを作っても誰も見ないということです。
断っておきますがマニュアルが悪いということではありません、何でもかんでも、マニュアルにすればきりがありません。
まずは、本当に必要な業務。困っていることに絞ってやってみましょうということで、マニュアルにかかる時間を減らしてもらうことにしてもらいました。
もう一つの問題、作業指示書が現実とかけ離れた数値になる問題については、さらに具体的に教えてもらいました。
――――実際にどのように標準時間を決めておられますか?
「お店の人に自分のやってる作業とおおよその時間を申告してもらい、それを標準時間としてます。理由は、業務改善部にそれほど人がいないため調べることが出来ないからです」
――――なるほど、ここは、このままだと、うまくいかないので、一つアドバイスをさせていただいてもよろしいでしょうか?
「はい」
――――なぜ、自己申告方式がうまくいかないかと申しますと、人の脳は、自分の体験や考えなどの情報を言葉にする際、単純化しようとして、情報の「省略」「一般化」「歪曲」といったことが起こるからです。
例えば、「品出し」という作業ひとつとっても「商品を探して、台車に積んで、品出しをして片付ける」までを「品出し」という人もいれば、単に「商品を棚に並べる行為」を「品出し」という人もいて。
人によって認識が違います。
また「混んでいる時間なのか?」「空いている時間なのか?」によっても作業速度は全く変わってきます。
「いつもは、このくらいです」といった例外はないように話す人もいます。
現実的には品出し作業中に、売場を聞かれたり、呼び出しがかかったり、クレーム対応といったコトを含めると、そこにかかる時間はかなり幅があるということです。
つまり、自己申告では正しく 実態を把握するのは難しいということです。
こうしたことから、自己申告方式のデータ収集は、小売業の作業指示書の時間計測にはには不向きということが、過去の調査からわかっているので、おやめになったほうがいいと申し上げています。
現実とかけ離れたツールは、だれも使うことができません、今すぐ、調査の方法からしっかりやり直してみることできますか?とお聞きすると
「はい、やってみます」と 業務改善部長さんの顔がパッと明るくなったので 何とか次の一歩を進めていくことができそうな気持になられてよかったと思っています。
作業指示書の目的は何なのか?と問うた時、私は最少時間で利益を最大化させることです。とはっきり申し上げています。
言い方をかえれば、これを作って活用することで、店の人件費は現状から何パーセントさげることができましたか?という結果が出るものになってますか?ということです。
口で言うのは簡単ですが、やるのは難しいことです。
でも、後になってから効果が出ないと嘆く前に、まず、いちばん大切なこととして、必ず覚えておいていただきたいからです。
さあ、貴社ではまだ、使わないマニュアルづくりに時間をかけ、使われることのない作業指示書を作り続けますか?
それとも、使えば使うほど高い効果が得られる作業指示書づくりにフォーカスし大きく飛躍しますか?