今週の儲かる繁盛店の視点 第514話:「なぜ、目に見えるものしか議論しようとしない企業がダメなのか?」
先生、売上は前年比を越えていても、ここ数カ月で経常利益率が落ちてるんです。とある企業の社長さんからのご相談です
――――具体的に教えていただけますか?
ウチの営業会議では「チラシがあたった」とか、「競合に日替わりが勝った負けた」という売上の議題の中心なんです。
しかし、最近、チラシを入れても、売上は上がらないことから、販管費をどうやって下げいくか?についてもきちんと議論していかなくてはとおもってます。
ところが、いざやろうとすると、何をどのように進めていけばいいのかわからないのです。
今、差し迫っているのが人件費で、今年は賃上げを実施しますが、来期も出来るかどうか?が問題なのです。
――――結構ハードルが高いと思いますが、何もしなかった場合どうなりますか?
「昨年は最高益でしたが、来期以降は減益になります。利益のでていない店は閉鎖。賃上げどころではなく、賃下げ、リストラを考えないくてはと思っています」
――――そのハードルを乗り越えることができた時、未来はどう変わりますか?
「人時売上高が上がるような、効果的な行動がとれれば、どの店でも利益を出せることから経常を上げられます。改装もできますし、出来れば店も出していきたいです。
働く場所が増えれば雇用もできます。バラ色の未来を手にできるかどうかはわかりませんが、これまで、避けてきた人時売上を先延ばしにしたくないのです」
――――どのくらいの人時売上高が実現できれば良いか、目標があったら教えていただけますか?
「月に一回は生産性改善チームから報告があるのですが、実は…正確な数値(人時売上高)はわかりません」
――――では、どのようにして、人時売上を把握し、一歩を踏み出していくかを一緒に考えるということでよろしいでしょうか?
「はい、よろしくお願いします」
人時売上(ニンジウリアゲ)とは、一人当たり時間売上高のことを表します。
一人の従業員の方が、一時間でどれぐらい売上高を上げることができたか?という指標です。
わかりやすく言いますと
「今日一日の、売上を立てるのにどれぐらい人件費を使いましたか?」という意味です。
この「人時売上」の考え方を、取り入れていきますと、店舗で働く人の意識や価値観が大きく変わってくることが分かります。
実際にお手伝いさせていただいてるA社でも、これまでは、売上・粗利という目標しかなかったため「チラシをいれて欲しい」とか「人が足りない」といった店長の声が絶えませんでした。
ところが、人時売上の指標をいれて1年もたつと、そういった声は聞こえなくなります。
理由は簡単で、同じ売上高を立てるのであれば、出来るだけ少ない人時で回す方がこの数値が上がるからです。
そのため、店長やマネジャーはムダな作業をしなくなります。自分たちで作業をコントロールできるようになるので残業も減ります。
チラシの準備やチェックなどは時間がかかる割に、売り上げアップにならないので、「チラシ店舗から外してほしい」といった店長の声もでてくるようになります。
また、新入社員も、最近は入社しても直ぐに辞めてしまう人が多く、教育時間がもったいないため、新入社員の配置を辞退したいといった店が増えます。
こういったことが相乗効果となり、店舗人件費もみるみる変わっていく訳です。
さらに、そこからもう一段階人件費を下げていくために、店舗の非効率業務改善に着手していくわけですが、ここから、本格的に作業指示書作りに入っていきます。
これによって標準的なスーパーマーケットチェーンであれば、2割程度の人件費は、無理なくにさがるようになります。
注意していただきたいのは、この順番を絶対に間違えてはならないとうことです。ここを間違えると、人件費は減るどころか反対に増えるだけでなく、社内の反発をかいすべてが水の泡になってしまうからです。店舗で働く人たちの意識や価値観を変えることなしに、いきなり作業割当をいれたりすれば、店舗のパートさんから大きな反発をかうことになりかねないということです。
よくあるのは、社内のこうしたムダ改善せずに、どこかで聞いてきた作業割当表に作業を入力すれば、人件費が下がると思っている社長さんがいたりします。
言わずもがな、作業割当表だけを先に作っても、入力業務が増えるだけで、人件費は増えても減ることはないということです。
指標導入⇒非効率な業務改善⇒作業指示書この順番こそが大事なポイントなので、ここを外さないように、このコラムを読み終わったあと、直ぐにとりかかっってみてださい。
詳細は、セミナーで解説しておりますが、チラシがなくても、新入社員がいなくても、人時売上を上げられる状況はどの企業にもできるということです。
さあ、貴社では、まだ、売上、チラシ、作業割当といった、目先の改善をやろうとして反発をかうことをやりつづけますか?
それとも、働く人の意識価値観を変える手法で、無理なく人時売上の高い店舗を作っていきますか?