今週の儲かる繁盛店の視点 第518話:「なぜ、売上に力を入れると人件費は増えてしまうのか?」
先生、売上が良いと、人件費が超過してしまうんですが、それをなんとかしたいのです。 とある企業の社長さんからのご相談です。
――――どういうことでしょうか?
お話をお伺いすると、「ベテラン社員やパートさんが、定年を迎え退職したんです。それを引き継いだ人たちが、同じ速度で仕事がこなすことができず残業になっている」とのこと。
――――具体的に教えていただけますか?
「以前は、そういったベテランがタイムキーパーを担っていて、この仕事は誰がやったほうがいいといったことを決めていたんです。
そういった人がいなくなってしまい、皆が、バラバラに動いていて、早く終わった売場は暇そうにしていて、忙しい売場はいつも残業している。そのため、店の雰囲気があまり良くないのが原因のようなんです。」
――――特に解決されたいことはなんですか?
「ベテランが抜けても 誰にでも回すことが出来るように標準化して、そういった中でやりがいを感じてもらえるようにしたいのです。」
――――「店舗標準化」「仕事にやりがい」を考慮し、人件費を下げていくには、どのようにすればいいか?分かれば良いですか?
「はい、よろしくお願いいたします。」
ーーーー問題を抱えている店舗について教えていただけますか?
そのお店の年商はどれくらいですか?粗利・利益率はどれくらいですか?
「16億で 粗利25% 利益率2%です」
――――ということは、販管費23%ぐらいかと思いますが、そのうち売上人件費率はどのくらいですか?
「16%ぐらいです」
――――売上をつくるための人件費率がかなり高いですね。人時はどれぐらいでしょうか?
「人時ですか?手元にデーターがないのでわかりませんが、この店はそんなに効率は悪くないとおもいます。」
――――それほど、悪くないということですが、当社が支援しているクライアント先の同規模店では、利益率6%は出しています。
そこでは、人時を毎日把握して、売上高に対して人数はどうであったか?という確認をしています。具体的にどこを改善していけばいいのかわかる状態にすることを徹底しています。
まずは店舗人時数をでるようにし、だれでも問題点を特定できるようにすれば、社長が店を回って指摘しなくても、人件費はおのずと下がるものだからです。
「社長が店をまわらなくて済む?でも細かく指導して、売上も上げなくてはならないとおもうんですが…」
目的は人時売上を上げることです。人時売上とは売上を上げるためにいくら人件費を使うことが出来るのか?を示した数値で 売上高÷人時で算出します。
つまり「売上を上げる」「人時を下げる」 どっちからやってもいいというとです。
しかしながら、人件費を下げるのであれば、社長が店を回って売上指導をすることは、やめなければなりません。
どういうことかと申しますと、店の人が良かれと思って作った売場を、社長から言われ、やり直すたびに人時数が増えてしまうからです。
社長からの指示で売り場を変えるとなれば、店では一人1時間×3~4人の時間が必要になってきます。それを止めることによって、店舗で余計に手がかかる作業時間問題が解決するからです。
現に、これを止めたことで週3人時の時間が減り、1店で年間150人時削減することができた企業があります。
これは、パート社員一人一か月分に相当します。これが、店舗数分減るわけです。
「社長は、店を回らない方がいいということですか?」
――――売上ではなく、人時改善について指導すればいいということです。
「ちょっと 勇気がいりますね。これまで、売上の取りこぼしとかあるんじゃないかといった、そのスタンスでやってきたので」
売上はコントロールすることが出来ません。しかし、人時はコント―ロールすることはできます。売上変化に併せ人時をコントロールしていくために、店舗が困っていることについて支援していくということです。
それによって、店は時間の余裕をもつことができるようになりますし、少ない人員で売上をあげることを可能にするからです。
それだけではありません。社長ご自身が考える時間をもつことが出来ますし、店に任せることによってベテランが抜けたあとのリーダーが育つようになるからです。
さあ、貴社ではまだ、売上の取りこぼしを追いかけ、人件費超過を続けますか?それとも、人時数に目を向け、人時売上アップで、収益力+店舗コンディションを大きく改善しますか?