今週の儲かる繁盛店の視点 第532話:「何があれば、値下げ競争とコストアップから抜け出すことが出来るか?」
先生、この猛暑のおかげで今月も売上は好調です。特に人時のコントロールができるようになってから、利益の下振れが無くなくなり本当に楽になりました。
と、嬉しそうに話されるのは、ご支援させていただいている、ある企業の社長さんです。
お話をお聞きすると…
かつて、売上至上経営を続けていて、売上が少しでも下がると、年度利益見込みが大きく狂い大変苦労したそうです。
特に、デフレ経済が続いたコロナ以前の10年は、値下げとコストアップの板挟みが続き、事業の縮小や店舗閉鎖で、社員からは「いつになったらリストラが終わるのでしょうか?」と言われ、本当に厳しかったそうです。
この売上至上経営から脱却するために何か方法はないか?と必死に本やネットで検索し、弊社サイトにたどり着いたのがコロナ特需の直前でした。
そこから、ひたすら人時改善について学び、実践してこられました。
その努力がようやく実り、今期の利益計画は2倍ちかくで改善していることから、余裕を持った商売が出来るようになったとのこと。
表向きは、まだ、まだと謙遜されていますが、次々とでてくる課題を部下に寄り添って解決していく姿はとても輝いています。
一般的に、事業の中期計画等に、弊社のようなコンサル会社が入ってやるときは、クライアントとして情報開示はやりたがらないものです。
そのため、出てきた情報が間違っていたり、社長自身も、スタッフが作ってきた数値の間違いに気づかないということがあり、結構結果がブレたりするものです。
ところが、こちらの企業の場合、経営数値を最初から全開示いただけたことから、ひとつひとつ、きちっとアドバイスさせていただくことが出来るので、結果がブレないのです。
そのかいあってか、中期計画も計画どおりに進んでいます。
――――何が一番変わりましたか?とお聞きすると
良くも悪も、出てきた結果を客観的に評価できるようになった。ということです。
今までは、売上至上主義であったため、店舗運営部は売上について真剣に話をしても、コストの話になると、それは管理部門の話。となって無関心だったそうです。
それどころか、売上が上がるのなら、コストはかかるのはあたりまえという、高コスト体質がなかなか抜けませんでした。
例えば、12月の人件費が最も高いのは、果たしてどうなのか?といったことが話に出てきても、
「そりゃあ12月は売上が高いんだから 人手がかかるのは当たり前」という声が大半を占め、誰も見向きもしない状況でした。
しかし、業務量やその内容を精査していくと、12月は商品単価が高く売上が高いだけで、作業は増えたわけではないのに、アルバイト採用や、長時間残業を慣習的にやってきたことが、少しずつ見えてきたのです。
年間利益の半分以上は12月で稼ぐことから、ここに、改善余地があるとなれば、経営として放置できません。
ただし、これには、注意しなくてはならない点もあります。売上至上主義でやってきた店舗運営の考え方を変えるのは難しく、無理にやると抵抗勢力にあって何も進まなくなってしまうからです。
いきなりやるのではなく、一年を通じて、調査をしながら、ソフトランディングで緩やかに進め安定させていくわけです。
そのためには、ベテランにしかできないような作業を徐々に減らしていき、誰でも、簡単に出来るようにわかりやすくしていく。
ようは、人についた作業を、作業に人を割り当てる店舗運営スタイルに切り換えた作業指示書の重要性を説いていくということです。
しかし、作業指示書をつくっても、すぐに、その通りに行くとは限りません。
皆さん家庭があるわけですから、お子さんの具合が悪い、親の介護といったことが、日々起きるため、スケジュール調整も簡単にできる、スケージュールプログラム開発も同時にすすめていくことになります。
これによって、今まで、直前にならないと出勤シフトが提示できなかった、月間スケジュールが早く提示できるようになり、部門内のコミュニケーションスピードが速くなります。
また、日々の作業量がハッキリ提示されることからだらだら残業もなくなります。
こうした、人時売上改善の一貫した取り組みによって、今では、平月と変わらない人員体制で12月もまわせるようになり、年間の利益の半分以上を占める12月の人件費改善によって、一気に利益改善が進んだのです。
社長さん曰く、もし、あのままやり続けていたら…値下げとコストアップの板挟みから抜け出せなかったと思います、・・・とホッとされた表情がとても印象的でした。
さあ、貴社ではまだ、コントロールの難しい売上中心の経営を続けますか?それとも、コントロールが楽な人時売上経営で成長の一歩を踏み出しますか?
著:伊藤 稔