今週の儲かる繁盛店の視点 第550話:「103万円の壁を有効活用できる企業と出来ない企業の違い」
「先生 大きな声では言えないんですが、103万の壁が無くなったところで、もっと働いてもらおうと思っても出来ないんです」
少し前に、セミナーに参加された企業の社長さんからのご相談です。
お話をお伺いすると、賃上げで人件費はオーバーしてしまっていて、残業等で長く働いてもらおうと思ってもそれが出来ない。とのこと。
年収103万の壁とは、給与所得非課税の基準ですが、これが上がるというのは、働く側にとっても企業にとってもメリットが増えます。
そのメリットは、単に繁忙期に長く働いてもらうだけでなく、労働時間がある程度長くなることで、仕事を通じ「組織に所属し続けたい」という気持ちが強くなり、能力をより発揮してもらいやすくなります。
また、結婚、出産育児から復帰し高収入を目指す女性に向け、社員、店長、幹部といったキャリアプランの足掛かりを提供することもできます。
就業人口が減る中、人材発掘と育成のチャンスが広がります。パート比率の高い小売チェーンにとっては、夢のようなルール変更といえるでしょう。
但し、そこには、落とし穴もあります。人を効率的に無駄なく活用が出来る企業に限って…ということです。
このコラムをお読みの皆さんは、もうお気づきのことと思いますが、103万の壁がなくなった途端、多くの企業は人件費コストが膨れ上がります。
理由はシンプルで、賃上げで時給が上がっていく中、仕事の指示が曖昧なまま契約時間を延長すれば、人件費だけが増えることになるからです。
かといって、店長は業務改善の仕方は教わったことがないのでわかりませんし、店長が出来る改善というのも小さなものに限られてきます。
このように社会のルールが大きく変わるときは、もはや 店舗の小手先の改善では通用しないため、会社として「変わること」が求められるということです。
そのためは、社長から店舗の担当者まで共有できる「人時」を使い「収益力をあげていく」手法で進めてくことが必須となってきます。
人時とは 一人当たり時間作業量のことですが、これを使った人時作業指示書で改善ポイントさえ押さえることが出来れば、毎年一定以上の収益を上げることが出来ます。
もちろん、それには企業の努力も必要ですが、これが機能しますと大きな収益力を手にすることになります。
一年365日、今日も、社内のどこかで冒頭のようなことが繰り返されています。
社長ご自身が何か一つでもこうした「変わること」をおこさなければ、会社は何も変わらず利益の昨年割れは続きます。
言い換えれば、「変わること」を選択した社長にしか、皆がやる気に満ちた明るい未来は手に入れることは出来ないということです。
多くの社長が自ら「変わること」を求め、ご相談にお見えになります。
「業務改革について自社にあったものはないか?」「せめて近しいものはないか? 」「もっと高い効果が得られるものはないか?」…そうやって、
社長が脳をフル回転させたとき、見過ごしてきた中に大きな宝があって、それを有効活用するための「変わる方法」に出会うことが出来るものです。
言わずもがな、年度の方針を決める時に、「人時生産性を上げる」といっても、ひらめきや思いつきといった直感的なものでは、店舗のムダを無くすものは出てきません。
人時生産性を上げていくための思考法や、仕組み、ツールが無ければ、どんなに優秀な人が集まっている企業でも、たった一つのムダを見つけ改善出来ない現実に直面するということです。
103万円ルールが制定された時の大勢の人で大量の業務をこなすやり方は通用しなくなりました。
このまま続けようにも、時給が高く人を増やすことができないので会社が動かなくなるのは時間の問題です。
経営として、この問題と真摯に向き合い、高時給を払っても利益を出せる収益モデルをつくっていくことは、社長にしかできないことであり、これこそが経営の醍醐味といえます。
私たちは、そういった感じた想いを持って走り続ける社長を徹底的にサポートしていきます。がんばりましょう!応援します!
著:伊藤 稔