今週の儲かる繁盛店の視点 第96話:「最短感覚で最大効果を生み出す方法」
「イトウさん、ムダを見つけるのって本当に難しいです。早く見つける方法はありますか?」——-あるチェーンストア経営者からのご相談です。
何でも、すぐにやることは大切ですが、実務を抱えた事業部長に改革をしなさいといわれても、簡単にはできません。
結果を出すには、人手もアイデアをひねり出していかなければならないことがたくさんあります。
「あげよう品質 下げよう原価」これは とある製造業の町工場の中に掲げられていた看板です。
製造業のようなものづくりの業界は対抗商品がはっきりしていて、海外との価格競争も厳しく、自社の改善によって利益を確保することにかかってきます。
売上不振の場合は、コストでカバーしなくては生き残れないという厳しい環境のため、どこでもトヨタ方式に代表される生産性改善に取り組んでいます。
一方で、小売業はというと、外資のような超ローコスト競合は十数年前までありませんでした。また人口も横ばいのゆるい時代が災いし、改善への取り組みが遅れています。
改善といっても、店舗改装で一過性の売上をつくるか、オペレーション面では、野菜の袋づめを計測したり、レジの作業スケジュール作成時間短縮化といった微量なものでとどまり、売上不振の対応策には到底およんでいません。
売れ筋を見つけ、単品管理で品切れをさせないことで、売上利益を確保し、それに見合ったコストをかけてきた、いわば高コストチェーンストア間の戦いでありました。
ところが、アマゾン、ネット通販、外資チェーンといった低コスト商法が台頭し、売れ筋品が安く簡単に手に入るようになり、ジワジワとその売上が奪われ続けています。
今、慌ててネットスーパー事業や通販に取り組んでみたところで、利益は減るばかりですから、もし売上不振の場合は、コストでフルカバーすることも視野にいれておくことが必要となります。
そうなりますと、コストの出血を止める治療をし、その後、「新しい習慣」を続けながら体力をつけていくこととなります。
面白いことに、治療はスムーズにいくものの、この「新しい習慣」が曲者で、どうしても自社では「軽視」してしまいがちになります。
そのために専門家の視点にもとづいた、体力増強の習慣作りがもっとも重要だといえます。
私の改革プログラムの1つに「非効率業務の洗い出し」というのがありまして、ここで皆さんいつも苦労なされます。
いわゆる店舗のムリ、ムダ、ムラ作業を徹底的に掘り起こすのですが、なかなか集めることができません。
——毎月最低20項目は出してくださいね。
とお願いしても1ヵ月後に「先生、まだ、4つしか見つかりません」というのは 日常茶飯事でして、多くのチェーンで見受けられる光景です。
かくいう私も 前職時代はなかなか見つけることができず、売場を這いずり回って必死に探したものですが、あることがきっかけで、一定の確率で「ムダ」が見つかるようになったのです。
前職の西友時代、ウォルマートと提携した当時、こういった問題にグイグイとウォルマートメンバーは切り込んできました。
例えば、当時の会社の用度品には、ボールペンやバインダーといったたくさんのアイテムがありました。
しかし、「文具品は嗜好性の強いもので、書きやすいとか、カワイイとかという視点で選ぶので、用度品としては必要ないはずだ」と考え、ボールペン等の文具を用度アイテムから一斉に削除してしまいました。
すると、あるお店から 「ボールペンがリストからカットされて仕事ができない」というクレームメールがあったと調達部門から相談がきました。
そこでウォルマートのメンバーと一緒に「みなさ~ん!お店が困ってま~す。机の中の不要になったペン類をくださーい!」と言って本部の各部署を袋を持って回りました。
あっという間に数百本のペンが集まり、それを「店舗でお使い下さい」と手紙をつけてお店に送りました。
店長から「こんなことやってもらったのは初めて、ありがとうございます」お礼の電話があり、以後これが自然に定着していきました。
また、店舗には不要什器がたくさんあって、毎年廃棄トラック何台分ものコストが発生していました。
そこで、「もったいないプロジェクト」というのを立ち上げ、社内インターネット上で、店舗間で自由に決済移動できるようにしました。
今までは、什器備品計画申請をだして、承認がおりるまで半年かかっていたのですが、中古什器の店舗間移動を3日間でできるようにし、不要什器の廃棄コストが大幅に削減されました。
これは一例ですが、こういったヒントをもらったら、すぐ実行する習慣を繰り返すうちに、どんなムダも「軽視」しない準備がととのっていきました。
そういう意味からいいますと「無駄遣いの習慣を変える」というよりも「新しい他の習慣に切り替えること」といえます。
始めるべき新しい習慣づくりの第一歩は、「ムダが無くなれば、どんなことが起きるのか?」と妄想しながら、売場のパートさんに「今、一番時間がかかっていることはなんですか?」と質問することです。
そして、経営者自身がやることは、月に一回プロジェクトとしてこの「非効率な業務」について考えるスケジュールを決めることです。それを続けることで、週次、月次での習慣が変わってくるのです。
店舗改革も習慣化してしまうことによって、「数字結果が変わるのが楽しみ」となりさらに「大きな期待」へと変わってきます。
日々の作業はできるだけ簡素化し、高いレベルの店舗コンディションづくりに集中させることで、気づくと結果が変わっている。
このシンプルで難しい手法を、企業に取り込んでしまえば、誰しもが経験できることなのです。
さあ、あなたも、今すぐ 動き始めてみてください。
今日も 最後までお読みいただきありがとうございました。
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