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今週の儲かる繁盛店の視点 Vol.25「労働力を売上に変換する方法で成長する会社とできない会社の違い」

 

 

 

 
第25話:「労働力を売上に変換する方法で成長する会社とできない会社の違い」

 
 先般、ご相談にお見えになった経営者の方から、「伊藤さん、販売力のある人とない人の差を埋めたいのですが」というご相談をいただきました。
 
—-販売力のある人に対して御社は十分な報酬を支給されてますか?勤務管理結果表を見ればいくらでも対策はたてられますよ。とはっきり申し上げております。

 
  販売力のある人とは、接客技術もさることながらその準備をちゃんとされている方です。

 そういう人は、自分のプライベートな時間で他店舗を研究したり、事前の仕入れ計画に十分な準備をしているから販売力があるのです。
 しかし、会社でそこまでちゃんと時間と給与を与えているチェーンは少ないのが現実です。

 こういった、サービス残業ともいえる個人時間での努力の上に成り立っているのが日本のチェーンストアの悲しい実情です。

 それ故に頻繁にサービス残業が、問題となってくるのです。

 
 私が店長着任した時も、残業問題には本当に苦労しましました。

「皆さん!残業はちゃんとつけてください。ワークルールです。」毎日、朝礼終礼で注意を促していました。

 耳にタコが出来るくらい言っていたのですが、2ヶ月が過ぎた頃、店長宛の差出不名の一通の手紙がきて「Aさんはタイムカードを押したあとに、作業をしています。ルール違反だと思います」と告発の手紙。

 Aさんは真面目だし 仕事のレベルも高い。まさか?と思ったのですが。

 本人に質問をすると「店長が言ってるのは建前ですよね?売上を上げる為にやってるんですよ」と全く反省していない。

 その後もあちこちの部門で、同じような人が次から次へと出てくるのにはビックリ。

「前の店長に、残業は常識範囲内にしてほしいと言われた」

「掃除や後片付けは、タイムカードを打刻した後でもいいと思っていた」

「その昔の上司に書類作成は、自宅に持ち帰ってやるのは当たり前と言われた」

「タイムカードを押さず仕事をすれば時間を気にせずできる」

「とにかく仕事の丸投げが多すぎて時間内に終わらない」

 いたるところでネガティブ意見が噴出してきたのです。

 理由は様々でしたが「嫌味を言われてまで残業代なんかいらない」といった「残業への不信感」が共通してたことが見えてきました。

 
 その当時は本部が「ワークルールの徹底」の通達しても店舗が一向に改善しないため、遵守しない店長マネジャーを解雇・降格対象として取り締まりを強化する状態で、溝は深まるばかり。

 実情を把握しようとしない本部側と、開き直った店舗現場で緊張状態が一年以上続いていたのは聞いていたのですが、こんな状態になっていたとは正直言って着任するまで分かりませんでした。
 

 とにかく店長として、まず最初に7人いた本社員全員の過去一年分の勤怠結果を引っ張りだして徹底的に調べることにしました。 

 勤務実態がおかしい部分を書き出して、サービス残業として計算しこれをもって各自と面談をしていきました。

 「これは未払い残業と思われますが実際は作業されてましたよね?」と聴くと全員「まあそうです」と渋々回答したため支払いすることに決めたのです。

 そして、約束通りに12月の勤怠修正で全員に過去一年分を一括支給したのです。金額が数百万円にも上りましたので一人あたり一か月分以上の者もいました。かなりの金額になったため給与支給日は騒然となりました。

 「店長本当にやったんだ」ということが伝わり 初めてワークルールの大切さを分かってもらえる実感が掴めた時でした。

 店長として「残業への不信感」を払拭することが目的でしたので、営業成績は散々な結果となったものの、社員意識は少しづつにかわりはじめました。

 タイムカード打刻率が70%→98%へ改善し、残業はちゃんとつけるような行動変化が起こりました。

 当然その影響で、残業代は一気に膨らみお店の利益は悪化です。

 このままだと「まずい!」ことに気づき、基本に立ち返り、残業をする場合は残業計画書を全員に書くようお願いしました。

 「結果的に残業した」ではなく、「事前計画を建ててから残業をする」ようにしてください!と説明会を開き丁寧に説明したのです。

 その結果「勝手残業」や「サービス残業」は殆どなくなり、利益下げ止まりの崖っぷち状態で経営をしていました。

 

 ある日、一人一人のその残業計画書と勤怠結果に目を通していて、ふと気がついたのは「これって本当にその人しかできない仕事なのか?」という疑問でした。

 例えば、POPカードの準備 売場清掃 POPカードの差し替え取り付けのための残業で2時間/日 鮮魚売場で週4回発生していたのです。

 刺身を切るのを専門とする人がこの作業に8時間もかけていたのです。

 よく聴いてみると、本部企画と直接市場で仕入れたものを合わせて売場配置が決まる。それに合わせてPOPを取り付けるので、それを把握できているマネージャーしか出来ないと思い込んでいたのです。

 他のメンバーにも聴いてみると、自分達も手伝いたいが、マネジャーが仕事をやってる間は質問ができずに、いつも手まち状態であったというのです。

 この時は、マネジャーに鮮魚売場の週間作業一覧表を大きな紙に書いてもらい、その作業ごとにメンバーを割り振るようにしてもらいました。

 次第に、彼の顔つきが明るくなり商品も早くでるようになりました。

 本人が一番辛かったようで 「だれもオレの仕事を分かろうとしない」ことから開放され、次第に残業は減り売上が浮上していったのです。 

 あとで聞いた話ですが、本人が入社したころは ベテラン腕前の社員が4人いて、話し合いをしなくても阿吽の呼吸で作業は進んでいたそうです。

 今は社員はマネジャー一人ですから業務をパートさんに振り分ける時間がつくれなくて本当に追い詰められた状態だったそうです。

 「助けてくれてありがとうございます」とお礼をニコニコ顔で言ってきた彼の笑顔は今でも忘れられません。

 たとえ、新任店長であったとしても、毎日の勤務結果を見るという地道な活動を続けるだけで、こういうムリやムダが少しづつ見えてくるようになり解決の糸口が掴める様になるものです。
 

 

 建築現場では家を建てる際に棟梁と呼ばれる現場監督がいます。大工、左官、設備、電気工事、それぞれの専門分野の人を設計図面どおり効率的に動かす統率者です。

 ですから一定のコストで期間内に家が出来上がります。

 小売現場のマネジャーとして、魚の調理加工技術はもちろん必要ですが、ここで必要なのは統率力でした。

 私はただ単に、ここを無駄なく回る仕組みにしただけのことですが、その仕組みをつくる原点は「勤務結果表を毎日読み込む」ことにあるということです。

 残業を調べるために見始めたことがきっかけでしたが、その源となる「勤務結果表」には店舗を支えてくれる、一人一人が今日頑張ってくれた、智恵、工夫、努力、苦悩、喜び・・・全ての行動記録が記されているのです

 

 大事なことは 労働力を売上に変換する為に 店長と一人一人の従業員が信頼関係を築くことであり、その最も大切なことが「勤務結果表を毎日読み込む」という行動となります。
 
 それがなければ どんなに素晴らしい仕組みがあっても全く機能しないと断言できます。

 さて、貴社では「勤務結果表」がどこにあるか、わかるようになってますか?
 
 今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 
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