商業界オンライン2018年3月21日に弊社代表伊藤の記事が掲載されました
問題が潜在化し、改善ができなくなる
儲かりたければ店舗支援をやめなさい
2018年3月21日
「新入社員が長続きしないのです。昨年は全滅です。どうしたらいいのでしょうか?」とある専門店チェーンの人事部長からのご相談です。
退社の理由は「忙し過ぎて、休みが取れない」「自分のことができない」といったものです。
――今後、既存社員の方も辞められないようにしてください。
と静かにお伝えしました
このチェーンに限らず、こうした昔ながらのやり方を続けておられる企業は どこも同じ問題を抱えています。
小売業だから、外食だから、残業をして当たり前というのは30年前の話です。今は、残業ゼロは既に定着しつつあり、年次有給休暇を日常的に取得させる仕組みが無ければ、それは辞めてしまうのは当然だといえます。
実は、この問題の解決自体そう難しいことはありません。
この状態を真摯に受け止め、現実的に一歩踏み込んで考えるだけで、自ずと解決していくことだからです
頭数で答えが返ってきて話が前に進まない
「それが、できないから困ってるんです」という声が聞こえてきそうですが。
――現状の店舗人時はいくらですか?
と尋ねても、
「1人不足してます。他の店では2人不足です。新入社員が辞めてしまったので……」といったように、人時ではなく、頭数で答えが返ってきて、話が前に進まない。
ということです。
そもそも、業務を行うための1店舗当たりの総人時はいくらであるべきなのか? これを把握せずにチェーン経営をやっていけば、出店のたびに新たな問題に対処するルールが追加され、業務は増え続けます。
さらに「幹部には問題意識を持たせる」だとか「必ず改善提案をさせるようにする」といった、意識や改善を求めた尾ひれが付くことで、この量は膨張していきます。こういったことに疲弊し、新入社員のみならず、転職される店長や幹部社員が後を絶ちません。
忙しくない割に品切れが多く、POPが乱雑
批判を恐れずに申し上げるとすれば、このような企業の共通点は、それほど忙しいという状況でもない割に、品切れが多く、POPは乱雑で、ショップのスタッフは(意外にも)手持ち無沙汰であるということが挙げられます。人時売上げが低いのは、利益にならない作業が多く、本来人時を投入しなければならない、発注や品出し、商品差し替えといった業務が、滞っている状況が浮かび上がってきます。
問題なのは、管理職が作業要員となりPOPの取り付けや品出しをしたり、ひどいときは、本部からも応援に入り、商品差し替え、いわゆるフェイス変更作業までやってしまっているという実態です。
断っておきますが、本部支援がダメということではありません。緊急応援するということはあっても、それを常態化させることは、絶対にやってはいけないと申し上げています。
まずは遅延が発生しているかを顕在化させる
理由は簡単で、こういったことを残業のつかない管理職が処理をすることで、どこで業務が滞り遅延したのかという問題が、潜在化してしまい、改善ができないからです。
アメリカのチェーンストアのツアーにご参加になったことがある方なら、ご存知かと思いますが、どこの店長でも笑顔で出迎えてくれ、店内を自信満々に案内してくれます。
もし、品切れをしていたり、まだ商品が出されていないものもあっても、店長は手伝おうとしません。そして、勤務時間が終われば、そのままにして帰ってしまいます。中には、これを見て「アメリカ人は細かいことを気にしない。日本人は繊細だからミスを放置することなんかしない」という表層的な意見を言う方もいます。がしかし、ミスが潜在化してしまい再発防止ができないことの方が重要であり、管理職が手伝うことをやめない限り、改善が先送りされることになるからです。
もし、先の、人事部長に一言アドバイスするとすれば、
「忙しい、忙しい、人がいない、休みが取れない」という不満や不安がでたら、どこに遅延が発生してるのかということを顕在化させることから始めてください。
ということになります。そうしない限り、どれだけ人を採用したところで 充足させることはできないということは火を見るより明らかだからです。
新入社員が辞めるのは「本業改革 先送り」への警鐘
人が多い、少ないという議論ではなく、1店舗当たりの作業量がどれくらいあり、それが多過ぎるから仕事に追いまくられて、皆が、残業になっているはずという仮説を立てることが重要なのです。
新入社員が辞めていくといった切実な問題は、こういった仕組みつくらずに、社員に「意識」や「改善」といったモチベーションだけを求め、本来やるべき、本業改革の先送りへの警鐘だということです。
まずは、日々の業務量の実態を可視化し、人時について、社長や幹部が同席のもと、店長がその目的・活用方法について学ぶことです。日々の人時と売上げの関係はどうなっているのかということ知らなければ、業務改善にたどりつく前に、息切れをしてしまうからです。
自社の店舗の作業にかかわる基礎データを知り、自社の健康状態をしっかり把握することから始めてみることをお勧めします。
先のチェーンのご武運を祈念します。
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