商業界オンライン2018年4月20日に弊社代表伊藤の記事が掲載されました
店舗運営本部は機能しているか?
人件費が下がらない要因を探れ!
2018年4月20日
「人件費単価の上昇で 人件費が毎年上がってしまって……」とあるチェーンの管理本部長からのご相談です。
―――なぜ 管理本部が店舗人件費コストを心配されるのでしょうか?
「人件費は管理本部の担当ですから……」
―――管理本部では、人件費は下げることはできませんが、店舗運営本部ならば、いくらでも手立てはあります、とキッパリ申し上げました。
そもそも、店舗運営本部が、業務量を減らす前に、管理本部が定時昇給、新入社員採用、パートナーの時間給といった単価アップを行えば、人件費が上がるのも無理ありません。
一般的にいいますと、社長が単価引き上げ与件を踏まえ、店舗運営本部に対し、総量引き下げの指示を出します。結果的に人件単価が上がったからコストオーバーで減益というのは、店舗運営本部がその役割を果たしていないからにほかなりません。
そこで今回は、経営者が店舗運営本部に対して指導すべきことについて、少しお話しをさせていただきます。
今より少ない人員で新規顧客を増やし続ける
まず、これは大基本として、一時的に利益を上げるためのコストカットではないということです。
貴社の店舗で、「今より少ない人員で、新規顧客を増やし続ける収益モデルをつくることができるか?」ということへの挑戦となります。
「新規顧客を増やし続ける」と申しましたが、そのためには戦略的に余剰コストを作り出し、それを利益を生む業務に再投資していくということです。大事なことは、この目的達成のために、どこから手を付けていくのかを明確にしておくということです。
店舗運営本部で戦略的に余剰を作っていくべきコストには、人件費、水道光熱費、施設保守費等がありますが、今回は、その中で最も構成比の高い『店舗人件費』について、触れていきます。
業務を利益を生むもの、生まないものに分ける
ここでの店舗運営本部の人件費については、大きく分けて「利益を生む業務」と「生まない業務」の2つに分けて考えていくことになります。
「利益にならない業務なんてあるのでしょうか?」という声が聞こえてきそうですが、少し言い方を変えますと、直接、お客さまからお金をいただく業務と、それ以外の業務というふうに分けて考えていくことということです。
前者はレジ、ギフト、対面販売といった、まさにお金を受け取る業務ですから、こちらの都合で止めることは、なかなかできないものです。後者は、発注、荷受け、仕分け、加工、品出し、清掃……といった、いわば、お金を受け取るための準備であったり、後片付けです。こちらは、社内的なコトなので、作業効率を高くし、時短化すればするほど、生産性は上がり、人時売上高も上がります。
まずは、利益を生まない業務はできるだけ短くし、利益を生む業務にできるだけ時間を使うという手順を踏んでいくことなります。
具体的には「手が空いている人は、部門を超えて、レジや忙しい部門に支援に行ってください」ということになってくるわけですが、現実的には、人によって時間給も契約時間も異なりますし、仕事のスキルややり方も違います。店舗の縦割り組織の壁を乗り越え、人を自由自在に仕事に割り当て活用するのは、1店舗であっても容易なことではありません。
まずは「人時」だけを見て、改善させていく
そこで、まずは「人時」に注目し、そこを改善していくという考え方になります。そもそも人件費の計算式は『人時×人時単価』となりますが、市場の相場で簡単に引き下げることのできない「人時単価」はいったん置いておき、総量だけをコントロールすることに集中していくようにします。
こうして「人時」についての取り組みを進めていくと、指導先チェーンの経営者から必ず出てくるのが、「それがどういうもので、どう活用していくかは分からんのです」という声です。
おっしゃる通り、「人時」はなじみの薄い言葉なので、私も前職時代に、こう話しても、周囲になかなかイメージが伝わらず、その定着に長い年月がかかったという苦しい時期がありました。
人時と人件費の違い、分かりますか?
そこで指導先の経営陣には、とにかく早く慣れてもらうために、人時と人件費の違いについて、次の2つのポイントでお伝えしています。
1つ目は、その閲覧頻度の違いという点です。人件費は、月次営業成績表で見ることになりますが、人時は日時の人時実績表で確認できます。この意味するところは、人件費は月に一度しか閲覧できないのに対して、人時は毎日見ることができるということです。予算内に収めようとしても、月に一度しか見られないのであれば、現実的にコントロールはできません。売上高のように、毎日出すことで月末予測が出せるのと同じように、人時も日々閲覧していくことで、進捗管理ができ、予算内に収束させることが可能になるのです。
2つ目は、余分な作業の含有量の違いです。人に仕事が付いているのが「人件費」で、仕事に人を付けるのが「人時」となります。人に仕事が付いていると、忙しいときには誰でも急いで仕事はやってくれますが、暇なときはゆったりと各自のペースで仕事を行います。問題なのはまじめな人ほど「手が空いてしまってはいけない」という意識が働き、余分な仕事を作ってしまい、作業が詰まっているように見せてしまうことです。
冷静に考えれば分かることですが、余分な仕事を持ったままで忙しい日を迎えれば、今度は人が足りなくなり、その分が残業となって人件費が超過することになります。
一方で、仕事に人が付くとなれば、作業のないところに人はいらないので、余分な仕事はなくなることになります。
つまり、「人件費を人時に切り替えていくこと」で、必然的に余分な作業が削減されるようになるわけです。
「言っていることは分かるが、どこからやればいいのか」という声が聞こえてきそうですが、詳細は セミナーでお伝えしていますが、プロジェクトを立ち上げ、業務の棚卸しや追跡調査から始めていきます。
こうした調査から、店舗の売場作業などに余分な業務が多く含まれていることが見えるようになります。理由は簡単で、個人の行動や手元作業といった見えにくく、個人に依存してきたことが、明らかになるからです。
店舗では総人時の7割がこの売場業務になっていることから、この実態を浮き彫りにすることで、そこに隠された埋蔵金を発掘することができるのです。
店舗業務をレジ業務のようにコントロールする
この売場業務の対極にあるのが、食品フロアのレジで、その混み具合とレジ開閉状態を見れば、人の過不足は一目瞭然になります。そうした意味では、レジ業務は業務内容もはっきりしており、どのチェーンでもその処理時間には大差がないのが特徴で最もコントロールしやすい業務といえます。
全ての店舗業務をレジ業務のようにコントロールすることで、店舗ごとの人時生産性は飛躍的に変わっていくことになります。
大事なことは、利益を生まない業務を放置せず、利益を生む業務に再投資するための仕組みを作ることす。
大切なことなのでもう一度繰り返しますが、一過性のコストカットではなく、継続的な成長をするチェーンになるためには、業務改革の仕組みを店舗運営本部内に設定し、人時総量をコントロールし、安定した経常利益を出し続けることです。
さあ、貴社では「販管費増加」の言い訳をしないために、既に店舗運営本部にこういった指示が出されていて、行動をとっておられるでしょうか?
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