商業界オンライン2018年1月18日に弊社代表伊藤の記事が掲載されました
あなたの会社はどうなっている?
「毎年の新卒採用」は本当に必要か
2018年1月18日
私の仕事は経営コンサルタントです。毎年この時期になると、「うちは30人です」「わが社は10人です」「おかげさまで昨年並みに採用できました」という経営者の喜びの声を聞きます。
人事担当の方もようやく、今年の新卒採用の状況が見えて、あとは入社式へ向けて準備ということとなります。
「定期採用はこのままでいいんですかねぇ?」
しかし、先日、あるクライアント先を訪問したとき、このようなご相談を受けました。
「先生、正社員の定期採用はこのままでいいんですかねぇ?」
今までは時給単価がそれほど上昇しなかったので、なんとか助かっていましたが、ここ数年のパートナーさんの採用時給が高騰しているため、毎年今まで通りのペースで正社員を定期採用し続けるのが厳しくなっているというのです。
中小は大手をまねて定期採用すべきでない
批判を恐れずに申し上げると、毎年の新卒採用をやり続けるメリットはほとんどないと私は思います。
流通大手が各社、何百人の新卒を採用したことが新聞報道されますが、大手には大手のやり方があって、それを同じ業態だからと、中堅以下の企業がまねをすると手痛い目に遭うということがあるのです。
そもそも、大手チェーンも本業の小売りでは儲かっておらず、金融やデベロッパー、コンビニといった事業で、稼いでいるのが実情です。
そう考えると、小売りの売上げウエートが大きい中小チェーンが、これをまねて採用を続けるべきではないことが分かるでしょう。
もし、大手をまねて定期採用を続けていると、本業の収益低下を招いてしまいます。
5月以降の収益低下に注意が必要
特に注意しなくてはならないのが、4月に新規採用し、その負担が増える5月以降の人件費増による収益の低下。そこで、慌てて残業代や、中元や夏休みのパート・アルバイトの採用を絞っても、四半期分の利益を落とすことになります。
好むと好まざるにかかわらず、単価が上がる中で人件費を下げるためには、総人時を減らしていくしか方法はないわけです。
ここで注意をしなければいけないのは、「人減らしではなく、少ない人員で回せるように、作業人時を減らしておくこと」。これが非常に大事になります。
そのためには、企業としてその仕組みを持たなければできません。
商品ではしても、業務項目は棚卸しをしない
作業人時とひと口に言っても、その業務項目を洗い出してみると、スーパーマーケット(SM)の店舗で2000項目、総合スーパーになると8000項目以上になります。
商品の棚卸しはどこでもやりますが、実施義務のない業務の棚卸しをやっているところはほとんどないのが実情で、業務項目は増えることはあっても、減ることはまずありません。
商品は販売すれば、お金になるし手元から離れていきますが、店舗業務は365日毎日継続して行われるため、完了形がありません。
どこかで一度はそのやり方を確認し、やり方手順を見直すべきで、それによって、流れが変わり、キャッシュアウトの額は大きく変わってきます。
例えば、「品出し作業は1ケース何分でやるのか?」「かご台車1台の仕分けは何分でやるのか?」など、業務項目ごとに標準的な時間を設定するだけで、作業人時は大きく変わってきます。その上で、日々の入荷数量に合わせた人員配置にすれば、無駄な人件費は着実に減っていきます。
まずは、毎日やる業務から改善を始めよう
ところが、こうした状況は客観的に調べてみない限り、絶対に知ることができないものです。また、その人がなぜ、そういうやり方をやっていたのかは、別途ヒアリングをしなければ、分からないということも多くあります。
忙しいことを理由に、これをやらずして、「やれチラシだ」「やれ新店だ」「新商品だ」と次から次へと業務を投入し続けると、店舗作業は膨れ上がり、その結果、SMで2000項目、総合スーパーで8000項目という膨大な業務項目になってしまいます。
実はよく見ていくと、この中で毎日やるべき業務は限られています。「日々やる項目にどれぐらいの時間がかかるのか?」「それをどうやって軽減していくべきか?」「それを仕組みにしていくにはどうするか?」が今、重要で、こうしたことに興味を持たれない経営者は、全く生産性を上げる感覚が麻痺しているとしかいいようがありません。
売上げ対比で10%以上のコストが、毎日垂れ流されているこの事実を直視しない限り、「新入社員を昨年並みに採用したら、どういうことが起きるのか?」という重大さに気付かず、無謀な意思決定をし続けることになるわけです。
あなたは自社の総人時がいくらか、分かりますか?
コンサルティングの際に、「貴社の総人時はいくらで、新入社員を入れるとどれくらいになりますか?」とお聞きしても、即答できる経営者や人事担当者にはお会いしたことはありません。
詳細は、セミナーでお伝えしていますが、重要なのは「業界の採用状況を見ること」ではなく、「自社の業務総量を見据えた人材採用に転換させること」です。
さあ、貴社では、まだ定期新卒採用を続けますか?
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