商業界オンライン2017年12月18日に弊社代表伊藤の記事が掲載されました
大きな利益獲得チャンスを逸している
まだ「前年主義」貫き通しますか?
2017年12月18日
私の仕事はチェーン経営のコンサルタントですが、指導内容は現場の小さなことから、数億円規模の業務改善と多岐に渡っています。
私のところにお見えになる経営者の方からは、さまざまな質問や相談を受けます。膝を突き合わせて、社長と相対でお話しを伺うこともありますし、時には、経営企画室や運営部、人事部、商品部などの幹部がお見えになり、「会社を変革させるにはどうすればいいのでしょうか?」という経営会議さながらのパターンもあります(自由な形で相談をお受けしています)。
こうした相談には共通性があり、そこからも今、チェーン各社が何を求めているのかを垣間見ることができます。
最近、「業革に挫折した企業」が増えている
今まで前年実績をクリアしてきた企業が、今年になって軒並み、前年比割れを起こし、危機感を覚えて、弊社セミナーや私のところに相談にいらっしゃいます。そこで、異口同音におっしゃるのが、『業務改革にチャレンジして挫折している』ということです。
例えば、
「業務改善チームを発足させたが 機能せず解消してしまった」
「自動発注やLSPを入れたものの、うまく使えず、コストが下がらない」
「人時について以前勉強して、やっているが生産性が上がらない」
「先代からの付き合いで、チェーン経営の研修を受け続けているが、実績が上がらない」などですが、
ここで少し考えていただきたいのですが、どうして、このような問題が起こるのかということです。
一度、全てをゼロベースで考えることが大切
業務改革を成功させるためには、企業変革として根底から変えていくやり方と手順があります。ここを変えずに、新組織を作ったり、システム投資をしたり、店長研修をやったりしても、利益が増えないばかりか、マイナスになるというのは、むしろ当然の結果です。
利益を生み出す導線設計がなければ、結果は変わりません。そのためには、いったん全てをゼロ起点にし、組み立てていくことが必要です。そうすれば、結果はおのずと変わってきます。
例えば、予算編成一つとっても、来年度予算は経営企画室が前年をベースに大枠を決め、それを各主管部門と協議をするのが、ごく一般的なやり方だと思います。
ところが「変革できるチェーン企業」というのは、昨年がいくらだったので今年はいくらが妥当という議論は全くやりません。つまり、前年値実績を予算設定する際に全く考えないのです。
「何を言っているのか意味が分からない」という声が聞こえてきそうですが、例えば、人件費の場合、店舗人件費の前年値があって、既存店舗の社員数が決まっていて、派遣社員が決まっていたら、その残りでパート・アルバイトを雇うというのが、ごく一般的な決め方になると思います。
しかし、「変革できるチェーン企業」は、経営に必要な人件費総額を人時に変換します。
そして店舗ごとに本来、店舗で必要な人時を設定しておき、それに対して人時を配布します。毎年、人件費単価は上昇するとの仮説のもと、その分を作業人時で引き下げる検証を行います。
それを執行するのは店舗運営部であり、IT化であったり、機械化投資であったり、作業生産性を進めるための投資枠を確保していくことになります。
要は、積極投資をして、人件費の引き下げを計画的に行っていくと言う考えです。
余剰人時は、一般的なSMで20%~30%もある
一方、前年比主義で人件費設定をしているチェーンでは本来、店舗で作業に必要な作業量が把握されていないため、頭数換算の欠員補充体制を採らざるを得ないのです。この方式で店舗運営をすると常に、店舗の必要作業量以上に人員がいなくては店舗が回らなくなります。
つまり、余剰人時分も含めた採用を容認し、ムダな採用をしている企業ということになるのです。
この余剰人時は、実態としてどのくらいあるのかというと、一般的なスーパーマーケットの店舗で計測すると、20~30%あることが分かっています。言い方を変えると、これは売上げ対営業利益率でいうところの2~3%にあたります。
前年主義方式が、いかに大きな利益獲得チャンスを逸しているかが、お分かりになると思います。
さあ、企業変革のために予算編成を切り替える決意をされましたか?
それとも、まだ、前年主義を貫き通しますか?
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